小説

ある男の話

男はひどく疲れていた。どうしようもなく疲れていた。そしてその上うちひしがれていた。涙が目ににじんだ。しかしどうして泣きたいのか良く分からなかった。男としては、過ぎてしまったことを悔いるほどの若さも老獪さも持ち合わせていないはずだった。客観…